いももち

私たちの身近にある特産品や郷土食には、必ずその土地の地形や風土が関係しています。 小木半島琴浦地区のいももちは、9~10月頃にさつまいもを収穫し、室(むろ)に入れて熟成させ、1~2月にかけて室から取り出し加工して作られます。室内で熟成させることで、サツマイモのでんぷんが糖に変わり、とても甘くなります。収穫直後では、この甘みは出せません。 サツマイモを熟成させるために貯蔵する室を琴浦では「イモグロ」と呼び、家の裏にあるガケに穴を掘り、扉を付けて室として使用しています。 小木半島の大部分は大昔の海底火山で噴出した岩石が水中で降り積もったものでできているため、比較的やわらかく掘りやすい岩石です。そのため、サツマイモや野菜を貯蔵する室を作る際、掘りやすかったのではないかと考えられます。この自然の倉庫である室で熟成させることが、琴浦のいももちの特徴のひとつです。

ふかしたさつまいもに砂糖と小麦粉を少し加えて短冊状に形成し、乾燥させたものです。
小木半島の特産品となっています。

琴浦地区周辺には海成段丘が広がっており、平らな地形は畑や田んぼとして利用されています。
秋にはサツマイモが収穫されます。

ガケに囲まれた琴浦では、このように室(むろ)が多くみられます。
ガケに穴を掘り、扉を付け、サツマイモなどの貯蔵庫として利用しています。

室の中は4畳ほどの広さがあり、わらを敷いた上に収穫したサツマイモが積まれていました。

室から取り出されたサツマイモをふかし、少量の砂糖と小麦粉を混ぜ、短冊状に形成します。
(撮影協力:小木特産品開発センター)

一般家庭では短冊状のいももちをわらで編み、軒下などに吊るして乾燥させますが、ここでは並べて大きな乾燥機を使い、水分を飛ばします。
(撮影協力:小木特産品開発センター)

小木半島は、海底火山から流れ出た溶岩などが繰り返す地震によって海底から持ち上がり、できました。
琴浦に住む人々は、持ち上がってできた大地に穴を掘り、サツマイモを貯蔵する室として活用しています。

実際に使用されている室の温度・湿度計測結果です。
(7月~9月にかけての温度上昇は、室の扉が解放されていたことが要因と思われます。)

レポート投稿者

市橋弥生

佐渡ジオパーク学芸員
市橋 弥生(ICHIHASHI YAYOI)

佐渡生まれ佐渡育ち。新潟大学で地学を学び、2011年より佐渡ジオパークの専門員となる。趣味はカメラ。

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